【完】籠球ロマンティック
バスケを手放して、それなりに楽しんでいた生活。


だけど、心の何処かにぽっかり空いたその時間をポコポコ、と芽吹いた何かが埋めていく。


そんな感覚に気付いて、怖くなる。これまでの生活に満足出来なくなってしまう気がして、怖くなる。


「どうしても君が、君の力が欲しい……!だけど、勝ちたい!負けたくない!強いプレイヤーより上に行きたい!」


オフェンスに構える皇律子は、俺の中の空いたそこに、ロマンティックなものをポコポコと生やし、ダンダン、とボールを鳴らしてリズムを奏でる。


引き込まれてはいけないのに……俺はそのロマンティックなものを受け入れてしまいたくなる。


「1-1だから、点差は同点。このままあと2ゴール、奪わせてもらうよ」


「私も負けたくないから、何としてでも1ゴール先に取る!」


引き込まれてはいけないけれど、この勝負がつくまでは、この世界にのめり込んでも許される、よな?
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