【完】籠球ロマンティック
トン……トン。俺がボールを突く音が、嫌に空間に響き渡るような感覚。


今度は俺がボールを触り、皇律子がディフェンスに構える。


皇律子と俺とで分があるのは……やはり、高さか。


「やっぱりあのスゴいボール捌きで抜いてくるの?もっと見せてよ」


挑発してくる皇律子の、吸い込まれそうなキラキラした瞳に熱が沸き上がる。


……いかんいかん。落ち着け、柔らかく、しなやかに。


トントントン……ダン、とその、柔らかく打っていたドリブルを、突如低い体勢で打ちスピードに緩急をつける音が、派手空間を切り裂く。


皇律子のキラキラの瞳が冷静に俺の動きを先読みするように一緒に動く。


でもまぁ、その冷静なところを狙って攻撃、するんだけどね。


「そんなに離れてディフェンスしてて大丈夫なのかよ?」


「なっ……!」


最初に皇律子が俺に言った言葉と同じ言葉で挑発すると、その小さな体が近づく為に、少しだけ前のめりになる。


そうすると、小さな体は更に小さくなる。


俺はタン、とあくまで柔らかく、後方に向かって斜めに飛んで、ふわり、とボールを空高く放った。
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