【完】籠球ロマンティック
俺も視線をコートへ戻すと、丁度リューイがコイントスをしたところで。


リッコが、空中を飛ぶコインの動きの全てを大きな黒目で追いかけている。


チームを組んで知ったことだが、リッコは動体視力がかなり良い。


ボールの回転でバウンドする位置を予測したり、逆に自分のプレイに生かしたりする場面を何度も見たことがある。


「この分野に関しちゃ、多分リッコの方が一枚上手だろうな」


「でしょうね。ダイスケには悪いけど、リッコのあれは昔からだもの」


少し悔しそうに美鶴が眉間に皺を寄せる。かつて同じチームで戦っていた美鶴だからこそ、そこのところは認めているのだろう。


「さぁどっち?」


バシッ、と手の甲と掌でコインを挟んだリューイが問う。


「裏!」


「んー、じゃあ表で」


有無を言わさぬスピードで答えたリッコに対し、苦笑混じりに答えるダイスケ。


「リッコ大正解。裏だ」


コインを隠すように蓋をしていた掌を退けたリューイの声に、ギャラリーの盛り上がる声が響く。


《先攻が決まったようで、遂にお待ちかねのショータイムだ!……Are you ready?go on!》


イツの声に合わせて、リッコがテンポ良く突いたドリブルの音が響き、協和音が心地よく奏でられる。


俺の心臓もまた、わくわくのエイトビートを刻み始めた。
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