【完】籠球ロマンティック
互いが互いの動きの癖を知っている。


だから、隙を見て俺が手を伸ばしてもトラはギリギリで動き、ボールを奪わせないし、俺もゴールへは近付けさせない。


その攻防に、一喜一憂する声が響き渡り、この戦いを加速させるよう。


長いこと相棒として一緒に戦ったトラだけど、俺達はそれぞれに同じバスケという世界だが、違うジャンルの乗り物で突き進んでいる。


トラが飛行機なら、俺は船に乗って、それぞれその世界を旅する途中なんだと思えた。


その道の途中、今の船に乗る前に、少し道草を食っていた俺は遅れを取る。


俺の記憶に無い、新しいトラの動き。


ドリブルでボールを上下に散らせて、俺がボールを奪いに手を伸ばしたその一瞬、トラは横っ飛びして俺のマークを外す。


そのままゴールへ走るトラの肩に引っ付き必死で横に並ぶも、昔からダンクとレイアップしか無かったトラが取った次の策は。


高く飛び上がり、同時に飛んだ俺の阻止する手をするりと越えるような、フックシュート。
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