【完】籠球ロマンティック
ハーシーの、小さいけれど『固い』ディフェンスには、どんなプレイヤーにも焦りを生じさせる。


「……ンのっ!」


「わわわっ!」


少し強引に、そのディフェンスを振り払ったトラと、わざとらしく尻餅をつくハーシー。


それらを見ていた審判リューイは、笛の甲高い音を短くふたつ、その場に奏でた。


これでトラは2ファウル。それと同時に俺達ボールへと変わる。


「チッ……あの可愛い子スゴいね。俺等の癖も君達の特性も、全部把握して指示してる」


この一連の動きがリッコのサインからだということを感じたらしいサクが、ぼそりと一言、そう呟いた。


「スゲーよ、なんたって、あいつはただの可愛い女じゃない。俺達を集めたリーダーなんだから」


俺はその言葉へ、それはもう誇らしい気持ちで答えてみせた。


リッコ、あんたの色んな悩みなんかちっぽけだ。そう思えるくらい、あんたはスゲーんだよ。
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