【完】籠球ロマンティック
5th time
結局戻る場所
まだまだ寒さの和らがない、三月。
強豪校剣里高校では、中年の体育教師にして男子バスケ部の顧問宮角(みやかど)の怒声が響き渡っていた。
「だから!これは何だと聞いているんだ!」
手に持ったiPhoneのそう大きくない画面には、一ヶ月前に行われたスネイク・オーバドゥとの激戦が映っている。
あの時は、目先の強敵と戦うことしかなかったが、草試合……しかも、負けた試合が巡り巡って、今になって顧問に情報が入ろうとは思わず、心海 大空(ここみ だいすけ)は頭を抱える。
「名門校のうちの恥さらしだ!しかも、お前達三人はうちのレギュラーユニフォームを着る選手!何故このようなちゃらけた集団に負けているのだ!」
「……すみません」
いつも顧問が怒ったときには黙りを決め込む佐久間と虎次郎。今回も例外は無い。
代表していつも謝るのは大空の仕事だ。
かなり損なポジションである自分を心で哀れみながら、前で腕組みした手をちょろちょろ、と動かして気を紛らす。
「大体お前達は……!」
次にどんな怒りが向けられるのか、うんざりして白目を向きそうな大空は、ぼやぁ、と視線を飛ばし、虚ろな目になる。
こういう時は、うん。声が聞こえなくなった時に謝っときゃよし。
大空はそう思いながら、既に脳みそオフモードに入ってる佐久間と虎次郎に続いた。