【完】籠球ロマンティック
「あら先生、ちゃんと最初から最後まで、動画は拝見されました?三人共、今までに無い良い動きしてますわよ?」


今にも脳みそのスイッチがオフになりかかっていた大空だが、聞き慣れたその声に我に返る。


美鶴だ。美鶴は顧問のドストライクど真ん中らしく、怒られたところを見たことがない。


不思議な顔立ちの美鶴は、ある種の独特なオーラがあり、それに魅了される者がいる。


顧問は美鶴のそのオーラに魅了されてしまった哀れな男の一人なのだ。


「しかし、負けているでは……」


「そうね。でも、こんなに素敵な試合を、先生は私に見せてくれたこと無いでしょう?もう、コーフンしちゃったわぁ、その日は」


こんなこと普通生徒に言われたら怒るだろうに、顧問は『コーフン』の一言に鼻の下を伸ばしている。


「悪いのは三人じゃないわ、先生よ。もっとシビレるようなプレイヤーを育ててよ?」


さっきまでガミガミ怒っていた筈の顧問は、最早美鶴の掌でコロコロと踊らされている。


「三人も勿論だけど……先輩方の指導をしたらいかがかしら?」


「そ、それもそうだな!」


どうしてこう、男という生き物は単細胞なのだろうか。


美鶴に言われるがまま、練習する先輩部員の方へ去ってしまった顧問を見て、大空はガックリ肩を落とした。
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