【完】籠球ロマンティック
恋夜のその顔は、デートを断られた彼氏のようにも見えて、葉月は笑いそうになるのを堪える。


「なんでも、佳那汰と彼女が小旅行するらしくてな。『勝負下着を買うのを手伝うわ!』って、朝から電話で言われたわ」


「へぇー、佳那汰って前一緒に試合観に行ったあのカナちゃん?やるねぇ」


幸せな親友に対してのやっかみと、律子がそんなことの為に取られた苛立ちを隠せない恋夜に、葉月は我慢ならず笑い出す。


「……ンだよ、その笑いは」


「ははっ!いやねぇ、いいなーって思ってさ。若い子の恋ってさ」


そう言って、葉月の頭に過る金石の顔。


決して悲観的なものではなく、やはり彼の中で長い時間生きた彼女との思い出は甘やかなもの。


羽織ったパーカーの裾ごと胸元のペンダントを握り締めれば、レモンより甘く、みかんよりすっぱい味が口を支配する気がした。
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