【完】籠球ロマンティック
そして、葉月にも、新しい恋の風は既に吹き込み始めている。


「あ、ごめん。ミッツーから電話」


話を中断して電話を取った葉月を見て、恋夜はパイの実を食べていた論理の方へ寄る。


「……おい、ミッツーってさ、あれじゃねぇよな」


「みつ、る」


「マ、ジ、でっ!?え?あれなの!?嘘、ボーヤって言われて固まってたじゃん!」


恋夜はまさかこの組み合わせが恋愛の方向に向こうとは思いもよらず、驚き半分。


残りの半分は、葉月と金石の深い愛の物語を知るが故の、複雑な気持ちだった。


事情の全てを聞いてはいない論理は、それでも、何かくみ取って恋夜にパイの実を差し出す。


「ハーシー、前、向き始めてる。だから、だい、じょ、ぶ!」


「ふはっ……!だな。あいつ、心強いもんなぁ。それに彼女、金石さんも、多分ハーシーのあの姿、喜ぶだろうな」


乗り越えて、否、彼女の幸せを背負ってこの場所に戻るのを選んだ葉月だから、恋夜も論理もそう信じることが出来るのだ。
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