【完】籠球ロマンティック
逸人の手から解放された恋夜は『うぬぅ』と唸りながら難しい顔をする。


「頼むぜラブ。『お兄ちゃん』じゃリッコをすっきりさせてやれねぇんだ」


「……チクショー、ンなこと言われたら、断れないだろうが」


そう言い残した恋夜は、いつの間にかポケットに突っ込まれた五千円を確認し、律子の方へ走って行く。


「やだなぁ、妹が巣立って行くのは、寂しいもんだ」


「あはは、でも、大人は巣立つ子供を見守ってくしか無いんだよ」


二人を見守る逸人に、葉月は目を細めて微笑む。


「でも……まぁ、結局二人はここに戻ってくる。どうなろうが戻ってくる。俺達は、あの子達の居場所の一部でいようよ」


「そうだな……ま、あんまり戻りが遅かったらラブが狼になったと判断し、兄の愛の根性焼きをお見舞いしてやろう」


送り出したのは自分のくせに、それでも妹離れ出来ない逸人の姿に、葉月は今度は大きな声をあげて笑い出す。


大丈夫。あの二人は、愛だの恋だのそんな感情を差し引いても、特別な何かで繋がっているから。


フロアからいなくなった二人を見送り、逸人と葉月はコートの中のオルフェメンバーと論理の方へ、足を進めた。
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