【完】籠球ロマンティック
大きな工場が、夜だけキラキラと輝きを放つ、それはもう、ロマンティックな絶景が広がっていた。


「昼間は気付かねぇじゃん?俺ほら、帰り皆と方向違うからハーシーに送ってもらうだろ?その時にこれに気付いて。近くで見れそうなとこっていったらここかなって思ったらビンゴ」


楽しそうに語った恋夜は、少年らしさを残すあどけなく、どこか儚げな笑顔を律子に向けると、ようやく律子の体を離す。


すとん、とそのまま腰を下ろし、その絶景を眺める恋夜の横顔に、律子の胸はぎゅう、と搾られ、口の中に甘酸っぱい恋の味が広がった。


「こんな素敵な景色……どうして、私に見せてくれたの?」


その甘酸っぱさを飲み込んで、律子は恋夜に思いきって尋ねる。


すると恋夜は、口をきゅっと結んで『むむむ……』と唸り始めた。


次に、律子に何と言うか悩んでいるのだ。


『好き』『愛してる』『付き合いたい』……そんな言葉達は、少し違う。なんとなく、そう考えていた。


恋夜にとって、律子は特別愛しくて、特別大切で、そして、特別信頼する、ただの恋愛感情とは違った存在なのである。
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