【完】籠球ロマンティック
美鶴の情報によると、今日のこのトライアウト四回目は、今季トライアウトすべてのチームを見ても優勝候補がひしめく所謂激戦区。


来季への最後の挑戦だからな。そりゃ、激戦区になりますがな。


「俺達こっちのシードだから、つまりあれだ、順当に行けば決勝戦で大本命チームと当たることになりそうだね」


「そうだな。このチームは大学生チームなんだけどな、ついこの間まで公式リーグ経験したチームだし、ラブと同じ、多彩なドリブルを魅せるドリブラーがいるチームだな。結構巧いよ」


イツはトーナメント表を睨み、うーんと唸ってみせる。


その神妙さが妙にリアルで、なんだか『こいつら強いぞ』と脅されてるよう。


「でも、強くてもやるっきゃ無いっしょ。ってか、強い相手の方が燃えるじゃん?」


勝てば勝つ程強い相手にぶつかれるわくわくと、負けたら終わりのスリルで、思わずぶるり、と武者震いしてしまう。


「ねーねー、イツ、ソフトクリーム、食べたい」


「はぁ?……ったく、マカロンはどんな時でもマカロンだな。しょうがない、その代わり頑張れよな」


そんな俺とは逆に、いつも通りにリラックスした、マイペース全開のマカロンのおねだりに負けたイツは、マカロンと共に屋台へ歩いて行く。


力んで固くなるよりマシかもしれないけどさ……少しくらい、緊張出来ないもんかね。
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