【完】籠球ロマンティック
話を黙って聞いていたマカロンは、突然サンドイッチの袋を開き、ハーシーの口へ捩じ込む。


「モゴッ!……っはぁ!ビックリしたぁ。どうしたの、マカロン?」


その奇行に驚きつつ、それでも怒らないハーシーは、幼稚園児をあやすような優しい声でマカロンに尋ねる。


一方、マカロンは、いつもの無表情より少し力の入った顔をしていて、高く小さな鼻を膨らませて『フン』と唸る。


「今年、は、楽しく、楽しく、バスケ。んで、勝つ」


「……っはは!今日のマカロンは笑うし喋るし、嬉しいなぁ。歳食って涙脆くなったのかな、やっぱり、泣きそう」


「あー分かる。10代のお前達には分からんかもしれないけど、俺には分かるよハーシー」


マカロンのほんの少しの変化。でもそれが堪らなく嬉しいらしい大人二人は、なんだかホントにこのまま泣いてしまいそう。


「泣くのは、全部、勝ってから。ねっ?」


そんな二人に、やはり天然なのか何なのか、マカロンがいつも通りの柔らかな無表情でそう言ったものだから、俺とリッコは示し合わせたかのように吹き出してしまった。
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