【完】籠球ロマンティック
「……いーじゃん、まずは楽しんでやろうか」
この重圧も、ピリピリ感すらも、追い風に変えるくらいのプレイヤーでなきゃ、俺はこの居場所をくれたリッコに、ハーシーにマカロンに、ついでにイツに何も返すことが出来ない。
スピーカーから流れるクラブミュージック。5on5ではありえない空気。
DJがいないのが残念に思えるくらい、俺はもうこの世界にどっぷり浸かって抜け出せない。
右に左に、前に後ろに、ドリブルをジグザグと振りながら踏むステップは、俺のこの試合への楽しむ想いの表現。
素早く伸びてきたムネヒロの手を振り払うように、さっきはムネヒロがやった回転のテクニックを使ってバウンド方向を変えてみせる。
俺にだって出来るんだぜ、っていうか、今俺最強モード。ゲームでいう無双モードなんだわ。
回転をかけて反対側へ飛んだボールを足でトントン、とリフティングして上げれば、俺を称賛する歓声が取り巻く。