【完】籠球ロマンティック
あれは『右サイドから抜いてくる』『抜かれても良い』っていう二つの意味がミックスされているよう。


でも、抜かれちまったら……ああ、成る程。


考えは何となく読めた。右サイドからなら抜かれても、リッコの術中に嵌めることが出来るってことだ。


でもね、俺って知ってると思うけど、バスケのことになると単細胞で、負けず嫌い。


だから、出来れば抜かせないで止めたいのが本音だ。


「ねぇ、レディはどんなサインを送ってきたんだい?」


「んー?『勝ったらデートしてあげるわ』だってさ」


ゲームメイクを外にいるリッコが行っているのに気付いているらしいムネヒロの、どこか余裕のこもった声に、俺も無理矢理余裕のある返事をしてみる。


すると、ムネヒロは薄い唇を吊り上げて微笑み、軽い足取りで後ろに飛び、俺から距離を取った。


体の前でじぐ、ざぐ、と操られるボールに、俺は体勢を低くして身構える。
< 370 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop