【完】籠球ロマンティック
その場の、一番近いところでスローインから試合再開。


「一本しっかり!」


「気力だ!ハンズアップ!」


皇兄妹の声を背中に、コートの中の俺達は両手を挙げてディフェンスに力を込めた。


ムネヒロからのスローインを取り、相手方のシューターがフェイクをかけてハーシーに襲いかかる。


「ンもう!大きい!怖い!オッサン疲れた!」


なんて叫びながら、ハーシーは自分より大きな相手の頭上からのパスを、飛び上がってぐぐぐ、と空中で押し込めて阻止。


そのハーシーの、小さいのに筋力のあるディフェンスに、両者フロアに倒れ込んだ。


「ピッ!ディフェンス!……疲れているのは分かるが、荒いプレイ禁物!フェアプレイで!」


「すみません。気を付けますー」


二回連続の俺達のファウルに、審判から注意が入り、ファウルしたハーシーが右手を挙げる。


再度残り時間を確認すると、残り時間は23秒。


「……チクショウ、やってくれるね、スネイク・オーバドゥ」


「あれ?バレた?ってことはマカロンはもう出来ないかぁ」


残り時間を僅かにして、急に荒くなった俺達のプレイに、ムネヒロが初めて切羽詰まったように、眉毛を寄せて表情を歪めた。


そう。これこそ、リッコの言い渡した作戦なのだというのに、察しの良いムネヒロは気付いたのだろう。
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