【完】籠球ロマンティック
残り時間が少ない。だから、必ずムネヒロは仕掛けてくる。


とびっきり、キレキレの、スッパーンとぶった斬られそうなやつね。


視線だけで斬られてしまいそうな、そんな気がするこの数秒。


じぐ、ざぐ、と独特の軌道を持ったムネヒロのドリブルが、キュル、とバッシュの擦れる音と共に迫り来る。


左、右、左、からの、コンパクトで素早くバックに持っていって後ろ手でのフェイク。


そのキレキレのビハインドに、少しばかり腰が甘くなってしまう。


多分……いや、絶対。もし俺なら、ここから普通には抜かない。もうひと技とびっきりの一発をぶち込んで、少しでも流れをこちらに引き戻す動きをするだろう。


ムネヒロがそんな選手だと信じ、腰が甘くなった体勢を足の筋肉で持ち堪え、ムネヒロが次に行く前に自らが動き出す。


ビハインドからムネヒロが取ったのは、左手をひっくり返して相手を抜く、シャムゴットというストリートボールのドリブラーが良くかます技。
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