【完】籠球ロマンティック
「ところでさぁ、ハーシーっていっつも来んの遅くね?仕事16時上がりなんでしょ?」


そんな台風の目、恋夜はこの秋の寒空の下でソーダをぐびぐび飲みながら葉月に尋ねる。


炭酸が入っているなんて嘘のよう。まるで、さらさらのスポーツドリンクを飲むような勢いで瓶の中身は空になる。


「あー、やっぱり足んね。でもサイダーよりこっちのが美味いしなぁ、ペットボトルはむーりー」


細長い瓶の中身を空にしてしまった恋夜は、白金色に染まったツーブロック部分をしゃりしゃりと掻きながらぶつくさと呟く。


「良く炭酸一気するよねぇ」


「えー、ほら、あれだよ。大人がさぁ、最初の一杯はビール一気飲みする感覚と一緒なんだよな」


「あー、物凄く分かりやすい例え。疲れた時の喉越しサイコー」


カランカラン、と瓶の中のビー玉よりも整った丸っこいガラス玉で音を奏でながら言う恋夜に、ビールのその旨味を知る葉月は納得せざるを得ない。


「ってか、今はそれはどうでもいーんだよ。納得いくように、簡潔にいつも社長出勤する理由を聞こうか」


ムン、と下唇を尖らせた恋夜に対し、葉月はどう答えれば良いのか、すぐには浮かばない。
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