【完】籠球ロマンティック
「五時間目体育だから探してたんだ。バスケらしいよー」


「おー、マジか。そりゃ着替え急がなきゃな。先輩方のおかげで着替えそびれるとこだった」


バスケか………下手こいて出来るのバレたらまずいから、セーブするの大変だし、サボりたいな。


佳那汰の言葉にぼんやりそう思いながら、俺は小走りで佳那汰の方へ向かっていく。


やりたいことなんて、バスケを諦めたあの日から一年経っても見つからない。


バスケの無いこの日常には、夢中になれる何かなんて落ちていない。


けれど、こうやって仲良くしてくれる友人がいて、それなりにモテて、それなりにバイトを楽しんで稼いでいる俺は、それなりに、満足。


人生なんて『それなり』で充分幸せだということを、この一年で良く分かった。


でも、俺の心のぽっかりと開いた穴を埋める出来事に出会うきっかけがこうも簡単に起きてしまうなんて。


その出来事が起きてしまうことを知らないまま、俺の『それなり』の日常は時間を刻んで行く……。
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