【完】籠球ロマンティック



「ねぇ金石、俺ね……」


「待って!その、その言葉は、二ノ瀬が明後日の試合に勝ったら聞くから」


デートの帰り、遂に想いを告げようとした葉月を、頬を桃色に染めた金石に制止される。


「んー、じゃあ、絶対勝たなきゃなぁ」


「そうよ!観に行くから、勝ってよ。聞かせてよ。見苦しいくらい汗かいてさ、あんたらしく、走れよ、バーカ」


その時の金石の笑顔は、銀杏並木よりも美しく、儚かった。


葉月は目一杯の勇気を振り絞り、そんな彼女に口づけを落としたことをたまに夢の中で映写機で映す。


初めてのデートも、初めてのキスも、二度目は訪れない。


……金石美空は、葉月がウィンターカップで勝利を納めたその日、その試合に向かう途中、わき見運転をした車との接触事故により、長い眠りに就いたのだ。
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