【完】籠球ロマンティック
家から少し遠い私立校を選んだおかげで、俺が全中のバスケを制した中学出身だというのを知ってる者はいない。
他校で試合で顔を合わせていた奴等も、俺の今の風貌のせいで気付いてもいないし。
きっとあの時代の知り合いにバレてしまえば、あの頃を引き摺る俺は、出来もしないのにバスケへの未練がぶり返す。
っていうか、正直、授業とはいえこの重たく大きなボールを触っているだけで、走り出してあのリングにボールを叩き込んでしまいたくなる。
177センチと、普通なら高身長だけどバスケをするには小さな体の俺だけど、足のバネでダンクをぶち込む自分の映像が、鮮明に脳裏を焦がしていく。
「れーん、次、お前の番」
「おっ?おお」
授業だから、初めはレイアップの練習なわけで、並んでいた俺はボールをついて、ひょい、とゴールリングにボールを潜らせる。
「流石恋夜!何でも上手いな!」
「そうか?まぁ俺だし?」
ホントは、この空間の誰よりもやって来た事だから……とは言えない。
運動神経良くて良かった。これくらいなら、バレずにやり過ごせそう。