【完】籠球ロマンティック



ほんっとにつまんねぇ。


弱小とはいえバスケを知っている連中が、初心者を馬鹿にするようにボールを回す一方的なゲーム。


なまじっか運動神経が良いこちらのチームの奴等がボールを触ると、途端に本気になって奪い返し、有り得ないフォームで普段しないようなシュートをふざけ半分でやっている。


運動が出来る奴等や、頭や容姿が良い佳那汰、いつも目立っている俺に勝てて、更におちょくることが出来るのが自分等の土俵だけだなんて。


「マジっで、糞みてぇ」


「……恋夜?」


大好きなバスケをそんな糞みたいなことに使われて、俺は隠してたこととか色々どうでも良くなって、抑えていた気持ちを足に込めて、走った。


ふつふつと湧き上がるのは、怒りとか、こいつらは無条件でバスケ出来んのに俺はなんで出来ないわけ、とかそういう不毛な疑問。


今も、そんなフォームで入るわけ無いだろうスリーポイントを打つ連中の中の一人に、俺は全力で叫ぶ。


「お前、ハム使えやボケェェ!」


正式名称を『ハムストリング』という膝と股関節を繋げる部位を叫びながら、当たり前のようにゴールに嫌われ弾けるボールへ、ハムを使ってまっしぐらに飛び付いた。
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