【完】籠球ロマンティック
生徒達の群がる掲示板。どれが『香椎恋夜』なのだろうか。


少しのわくわく感に高揚する気持ちを隠しきれず、振り返りぐるり、と見渡す。


その視界の中に捕らえたのは、一際目立つ、赤茶色の髪の毛。


あれは確か……あれ、同じクラスの、えーっと、名前が分からないや。


うーん、と記憶を絞り出す仕草を取ってみるものの、佳那汰はその派手髪の名前が思い出せないでいた。


同じクラスと言っても、この学校は単位制であり、授業の取り方は人それぞれ。


佳那汰は朝のホームルームに出る代わりに夕方のホームルームには出ないことが多い。一方あちらの派手髪の彼は、朝一番に来ることはほぼ無に等しい。


その赤茶色の髪の毛がだんだん近付き、やがてレモン色のツーブロックが見え、顔が見え、彼の全容が明らかになって行く。


どちらかと言えば面長な狐顔。パッチリ二重はつり目がち。形の良い眉毛は元々つり上がっているのか、染めてあるが剃っている様子はない。


高くはないが小さな鼻と、均衡を保った唇。


よくよく観察すると、世の中の物差しで測って振り分ければ、間違いなくイケメンの部類だろう。
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