【完】籠球ロマンティック
しかし、現実にはそんな、生クリームのような甘やかな夢は転がっていないもので。
のめり込めるもの等やはり佳那汰には無くて、部活の水泳も、以前と変わらず習慣のようなものでしかない。
あの、羨望して止まないキラキラを振り撒いていた恋夜は、バスケを手放したことにより、そのキラキラをどこかに仕舞い込んでいた。
バスケのない恋夜は、佳那汰と同じ世界の生き物に成り下がっていた。
勉強もそこそこ出来て、運動もそこそこ出来て、だけど、突出する何かは持っていない。
それなりに表面上は満足して、だけど本当は満足していない、ぽっかり穴の空いた心を持って生きる恋夜に、ある一種の安らぎを感じていた。
ああ……一人じゃない。こんな気持ちで生きるのは、自分一人じゃないんだ、と。
けれど、のめり込める何かがあるのを知っている恋夜に、どうにかしてそれを取り戻して欲しいと思う自分に、佳那汰は戸惑う。
佳那汰はあの、どうしようもなくキラキラしたあれを、今度は傍らで振り撒いてくれないかと、切に願う。