【完】籠球ロマンティック
ほんの半年前の出来事なのに、随分昔のような気がしながら、目の前の恋夜をぼんやりと眺める。
「ン?ふぁんだ?ふぉんやりふぃて」
日替わり定食のハンバーグを頬張り、モグモグと口を動かしながら尋ねる恋夜に、ふは、と思わず吹き出す佳那汰。
「いや、初めて恋夜と話した日を思い出してね」
「ふぉあー……んぐっ、あれか、テストの貼り出しの日。なっさけねー顔してたよね、佳那汰」
本当は中学三年のあの日なんだけど、きっと恋夜はあの時の相手の顔なんて覚えていないだろう、と佳那汰は思い微笑する。
実際、佳那汰も恋夜以外の相手の顔をはっきりは覚えていない。
「わー、うっざ。恋夜だって新入生の癖にブレザーにパーカーかませてたじゃん」
「若気の至りですよ。今やかますことなくパーカーオンリーですから」
それじゃあ悪化してるよ、とは楽しそうにキラキラを振り撒く恋夜には言えなかった。