チョコホリック【短編】

それを彼も知っていた。


知っていて、嫌がるあたしをからかっていたんだ。


今思うと、あれは好きな子をからかうようなものだったのかもしれない。


うぬぼれかもしれないけど、あの子はあたしにばかり構っていた。



でも、当時のあたしはそんなことを思いつきもしないで、ただ嫌でしかたなかった。


美容整形でもして、取ってしまいたいくらいだった。



これを少しだけ好きになれたのは、この高校に入学したとき。


今でも、目をつぶれば、あの桜舞う日が簡単に思いだされる。



入学式のあの日、新任の小倉先生は舞台のうえで挨拶をした。


その顔の右目の目じりにはホクロがあった。


それはまるで、15年間いやになるほど見ていた、鏡のなかのあたしだった。



自分以外に泣きボクロのある人を見るのは初めてで、それからは無意識のうちに目が追っていた。


そうして、気づく。

小倉先生の笑顔に。

< 11 / 50 >

この作品をシェア

pagetop