チョコホリック【短編】
それを彼も知っていた。
知っていて、嫌がるあたしをからかっていたんだ。
今思うと、あれは好きな子をからかうようなものだったのかもしれない。
うぬぼれかもしれないけど、あの子はあたしにばかり構っていた。
でも、当時のあたしはそんなことを思いつきもしないで、ただ嫌でしかたなかった。
美容整形でもして、取ってしまいたいくらいだった。
これを少しだけ好きになれたのは、この高校に入学したとき。
今でも、目をつぶれば、あの桜舞う日が簡単に思いだされる。
入学式のあの日、新任の小倉先生は舞台のうえで挨拶をした。
その顔の右目の目じりにはホクロがあった。
それはまるで、15年間いやになるほど見ていた、鏡のなかのあたしだった。
自分以外に泣きボクロのある人を見るのは初めてで、それからは無意識のうちに目が追っていた。
そうして、気づく。
小倉先生の笑顔に。