チョコホリック【短編】

鏡のなかのあたしは、いつも今にも泣きだしそうなのに、先生はいつも笑顔だった。


先生は鏡のなかのあたしなんかじゃない。


泣きそうになんて見えない。


泣きボクロがあるからって、泣きそうになんて見えないんだ。


あたしがいつも泣きそうだったのは、泣きボクロを気にしすぎて、本当に泣きかけていたから。



そんな単純なことに気付かされた。



そして、あたしは恋に落ちた。


ずっと見ていた先生。


でも、きっと告白なんてしない。


教師に「好き」とは言えないよ。



あたしは鏡に映る泣きボクロをそっと触れた。


ああ、ダメだ。


先生を見習って、あたしも笑顔でと思うのに、あたしの心は悲しみでいっぱい。


蛇口をひねって水を出すと、もう1度顔を洗った。


     *


それから日はめぐり、バレンタイン当日になった。

< 12 / 50 >

この作品をシェア

pagetop