チョコホリック【短編】
鏡のなかのあたしは、いつも今にも泣きだしそうなのに、先生はいつも笑顔だった。
先生は鏡のなかのあたしなんかじゃない。
泣きそうになんて見えない。
泣きボクロがあるからって、泣きそうになんて見えないんだ。
あたしがいつも泣きそうだったのは、泣きボクロを気にしすぎて、本当に泣きかけていたから。
そんな単純なことに気付かされた。
そして、あたしは恋に落ちた。
ずっと見ていた先生。
でも、きっと告白なんてしない。
教師に「好き」とは言えないよ。
あたしは鏡に映る泣きボクロをそっと触れた。
ああ、ダメだ。
先生を見習って、あたしも笑顔でと思うのに、あたしの心は悲しみでいっぱい。
蛇口をひねって水を出すと、もう1度顔を洗った。
*
それから日はめぐり、バレンタイン当日になった。