チョコホリック【短編】
こういうときに限って、授業が終わるのがとても早く感じる。
ホームルームも終わり、あたしは渋々、調理実習室へ向かっていた。
その足はとても遅い。
逃げ出したい。
でも、逃げたくない。
チョコを作りたくない。
でも、先生に教えてもらえるなら作りたい。
相反する気持ちがあたしのなかでせめぎ合う。
それでも、あたしの足が止まることはなかった。
「あ、芹沢さん、今日はがんばろうね」
「お、来たな。じゃあ、作るぞ」
実習室に着くと、市橋くんと小倉先生の笑顔があたしを迎えた。
彼らの前の広い机に目を移すと、そこにはチョコレートが置かれていた。
それを見て、ゆうつになる。
でも、作らないわけにはいかないんだからと言い聞かせながら、離れた机に荷物を置いた。
そして、もってきたマスクをつける。