チョコホリック【短編】
「うわ、すごい用意がいいんだね」
あたしを見て、市橋くんが驚いたような声を見せる。
それにしても、コイツは驚いていても目が細いのか。
こんなふうに目が細い人は瞼の筋肉が弱いんだろうか。
そんなどうでもいいことを考えながらも、とりあえず無言で彼を睨む。
マスクなんて引かれるだろうと思っていた。
だけど、匂いのもとを手元においた状態で平気なわけない。
どうにか匂いをシャットダウンしなくちゃ耐えられないんだもの。
もちろん、マスクで完全に遮断できるわけはないけど、きっと、ないよりは耐えられるはず。
でも、市橋くんがマスクを見てどう思うが構わないけど、先生の反応が少し怖い。
そう思ったとき、先生が口を開いた。
「芹沢、体調が悪いのか?」
「え?」
何を言われたかわからなくて、ぽかんとしてしまう。
「そのマスク、菌よけだろ? 風邪でもひいてるのか?」