チョコホリック【短編】
先生の匂いがする。
甘い匂い。
先生の体はいつも甘そうで、不思議に思っていた。
そっか。
きっと、お菓子をよく作るんだ。
昔、家に立ちこめていた香りに似ていて、少し懐かしい。
あたしって現金だね。
先生からなら嫌いなはずの甘い香りも平気なくらいに、先生のことが本当は大好き。
だから、その香りにとらわれる。
体を動かせない。
お願いだから、はやくどこかに行って!
そばにいて欲しいのに、落ち着かないから離れていたくなる。
すごく長い時間に感じた。
でも、きっと、本当は10秒とか20秒とか、短い時間だったはず。
先生が離れて、向かいのコンロを使う市橋くんの様子を見に行った。
ようやく、長く息をはいた。
そして、急激に寂しさが胸を占める。