チョコホリック【短編】

背中や肩が冷たく感じる。


残り香がまだあたしを包んでくれているけど、それだけじゃ物足りない。


わずかに感じた温もりをもう一度だなんてわがままを思ってしまう。



先生を見ようと思って、ちらっと前を見ると、市橋くんの刺すような目とあって、ビクリと肩が震えた。



……あんな目をするんだ。



どこに目があるのかわからなくなりそうなほど、目を細めて笑っている顔しか見たことなかった。


たぶん、どんなに嫌なことがあっても、笑みを絶やさないタイプ。



心から笑ってるわけじゃないかもしれないけど、それでもうらやましかった。


あたしは上手く笑えないから。



削ったチョコレートの3分の2を鍋に入れ、木べらで手早く混ぜる。



泣きボクロがあるせいで、悲しくないのに『泣いてるみたい』って言われるのが嫌だった。



白に茶色が混じり合い、全体が薄い茶で染まる。

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