チョコホリック【短編】

どういうものか、もう一度、ノートで確認する。


――テンパリングとは、チョコレートを溶かすときの温度調節の作業で、これを行うことによって光沢があってなめらかな口あたりのいいチョコレートになる。


――まず、湯せんでチョコをとかしながら、チョコの温度を40から50度ほどにあげる。次に、27度くらいまで冷やし、その後、30度まで上げる。



んん?


温めて、冷まして、もう一度ちょっとだけ温めて?


「先生ー、テンパリングってやらなきゃダメですかぁ? こんな面倒なことしなくても、チョコなんて溶かして固めたら食べられるのに」


市橋くんの言葉を聞いて、あたしもうなずいてしまう。


「おまえらなー、これは授業なんだから、ちゃんとしろよ。それに、テンパリングするのとしないのとでは、食感も味も全然違うんだからな」


「そんな違いなんて、俺らにはわからないですよ。なぁ、芹沢?」


市橋くんは刻んだチョコレートの残りをボールにあけながら、あたしを見た。


「だよね。固めてお腹に入っちゃえば同じなのに」


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