チョコホリック【短編】
「おーまーえーらー、テンパリングをちゃんとやらなきゃ、通知簿の成績を1にするぞ」
「いて、いて。先生、ギブ!」
小倉先生は市橋のこめかみを両拳でグリグリとした。
それを笑って見ていると、今度は長い先生の腕があたしに向かって伸びてくる。
その手があたしの頭を掻きまわして、髪の毛がグチャグチャになった。
先生には、「きゃー、やめて」なんて言いながらも、本心では「もっと」って思ってしまう。
触られて、ドキドキして、耐えられなくて。
でも、同時に、そのときが永遠に続けばと、先生と生徒を超えてこんなふうに絡み合えればいいのにと思ってしまうの。
あたし、欲張りだ。
先生なんて好きじゃない。
言葉ではそんなことを言いながらも、心では、先生の心を欲してる。
素直にならなくちゃ、その心を手に入れる日なんてくるわけないのに。
先生に促されて、あたしもチョコをボールに入れる。
さっき洗った片手鍋に水を張って、火にかける。