チョコホリック【短編】

すると、なぜかその隣からげんこつが飛んできた。


「いたッ……!」


な、なんで?


頭のてっぺんを押さえながら、先生を見上げると、呆れたような顔をしていた。


先生はハアッってため息をついた。


「おまえなぁ、ちゃんと確認しろよ」


「へ?」


先生は言いながら、さっきあたしが開けた引き出しを開けて、さっきの黄色の筒状のケースを取り出した。


ポンって小気味よい音を立てながら蓋を取ってみせる。


中からは、温度計が出てきた。


「ああ、温度計ってこんなケースに入ってるんですね!」


あたしは大きな声を出しながら、それを受け取った。


「芹沢さんって、ホントにお菓子作りとかしないんだね。女子だったら、一度は手作りチョコの経験ありそうなのに」


「う゛……」


とっさに、変な声が出そうになった自分の口元を押さえた。


すぐに、マスクを触って、まるでずれたマスクを正すかのように位置調整を行ってごまかす。

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