チョコホリック【短編】
市橋くん。
今年に入ってから転校してきたばかりの彼は、ひょろっと細長い体形をしていた。
短い黒髪、細い顔、細い目。
笑うと細い目がさらに細くなる。
というか、そういう表情しか見たことない。
いつも怖いくらいに笑顔なんだよね。
そんな彼が、こんなふうに教師に楯突いたことがすごく意外だった。
「……おまえなあ、俺が嫌いだから、授業にでなかったのか?」
先生が顔をしかめた。
怒っている。
無理もないよね。自分を否定されたんだから。
「そうです。本当は先生の授業なんて1度もでたくないとこですが、たぶん次以降はちゃんとでます。前の授業は特に出たくなかったので」
それを聞いて、先生は顔を左手でおさえながら、うなだれた。
その目は市橋くんを鋭く睨んでいる。
「はっきり言うなあ。まあ、いい。芹沢(せりざわ)、おまえはどうしてサボった?」
「……言いたくないです」