チョコホリック【短編】
料理用とわかってはいても、食べ物の中に温度計を入れるなんてちょっと抵抗を感じてしまうのは、さっきまで体温計の話をしていたせいかな。
えいっと、ひと思いに先をチョコにつけると、赤いラインが動いた。
ぐんぐんと伸びて、止まる。
見ると47度だった。
「セーフだな。俺のせいで失敗なんてなったらどうしようかと、冷や冷やしたよ」
先生がほっとした笑顔を見せる。
横目でそれを見てしまい、胸がきゅっとなった。
それをごまかすように、さっと顔を市橋くんに向けた。
「市橋くんは話してて、大丈夫だった? 失敗してない?」
「オレはちゃんと手も目も動かしてるからね」
にやっと笑いながら言われ、ちょっとむかついた。
「はいはい、どうせ話に夢中になったあたしがバカなんですよ」
市橋くんをあしらいながら、水を鍋にはる。
ええと、27度まで下げるんだね。
念のためノートで確認をとりながら、チョコの入ったボールを水にあて、チョコを木べらでゆっくりとかき混ぜる。