チョコホリック【短編】
赤のラインは下がってゆき、それを睨むかのように見つめた。
やがて、ちょうど27度になったところで、ボールをあげた。
次は30度まで。
たった3度上げるだけだから、慎重にやらないと温めすぎてしまいそうだ。
今度はさっきの湯の入った鍋にボールをあてる。
息を殺して、木べらを動かす。
そのとき、「よし、できた!」と市橋くんが大きな声を出したので、彼を見る。
早速、冷蔵庫からチョコを取り出して、コーティングの準備をしている。
その作業の様子をしばらく眺めてしまっていて、はっとした。
自分のチョコのことを忘れてた。
急いで温度計を見ると、どの赤いラインは39度を指していた。
「ああ!!」
思わず、市橋くん以上の大声を出してしまう。
「あーあ、これはやり直しだね」
小倉先生が後ろから温度計を覗き、言った。
言われたことに驚いて、振り返る。