チョコホリック【短編】
「せっかく今日はバレンタインなんだから、誰か好きな人にでも渡しなよ」
そう言った、先生の笑顔がまぶしかった。
「ありがとうございます」とお礼を言いながら、受け取る。
ああ、そうだ。
チョコなんて嫌いだから、渡す気なかったのに、予想外にも渡せるチョコレートが出来てしまった。
渡したい相手に教わって、ラッピングの用意までしてもらって。
本人にここまでお膳立てされてしまうと、逆に渡しづらい。
どうしよう。
渡さなければいい。
そんな選択肢はいつの間にか消えていた。
頭のなかでグルグルと考えながらも、トリュフを袋に詰める。
袋の大きさに対して、作ったトリュフのほうが明らかに多い――15個作ったから14個残ってる――けど、どうせ残っても処分に困るだけだから、無理やり全部入れた。
上から1センチのところで金のヒモでちょんと留める。
包み終わり、用をなしたマスクを外すと、顔をあげた。