チョコホリック【短編】
ショックで力が入らなくて、手からチョコの包みが滑り落るのを感じた。
小さく、ドサッという音が耳に届き、その拍子に目を開けた。
真っ先に見えたのは、紐がほどけて、床に散らばったトリュフ。
衝撃が大きかったのか、コーティングのチョコの作りが甘かったのか、割れてしまっていた。
……まるで、あたしみたいだ。
告白すらもさせてもらえなくて、無残にも壊された先生への思い。
ただ、その口へ届けたかっただけなのに。
口を引き結んで、うつむいたままでいると、床にしずくが落ちた。
ひとつ、ふたつ、とっても小さな水たまりを作っていく。
それを踏んで、一歩を出す。
なんとかしゃがみ込むと、チョコレートを集めにかかる。
今度はチョコにしずくがかかる。
その熱で、チョコだけではなく、あたしの思いもすべて溶けきってしまえばいい。
最後の一粒をつまもうとしたとき、先に先生の手がそれを拾い上げた。
「……ごめん」