チョコホリック【短編】
目がしらの熱がさらにひどくなって、あたしは力一杯、首を横に振った。
「……謝らないでください」
最後まで嫌な人でいてくれたら、先生のことを恨めるのに。
チョコを入れて、とばかりに袋を差し出す。
こんなことされても、まだ手が震えてしまうあたしはバカだ。
先生の顔は見れなくて、自分の手を見ていた。
すると、その手が熱に包まれる。
――手だ。
先生の手があたしの両手を包んでる。
「せ、先生?」
とっさに引きぬこうとしたけれど、がっちり掴まれた手は動かない。
「な、なんで?」
顔を上げると、薄く笑った先生の顔があった。
ああ、泣きボクロって本当に泣いてるように見えるんだ。
そんなことがわかってしまう自分が嫌だった。
だって、先生の笑顔が泣きそうに見えることなんて、今までなかった。