チョコホリック【短編】

目がしらの熱がさらにひどくなって、あたしは力一杯、首を横に振った。


「……謝らないでください」


最後まで嫌な人でいてくれたら、先生のことを恨めるのに。


チョコを入れて、とばかりに袋を差し出す。


こんなことされても、まだ手が震えてしまうあたしはバカだ。


先生の顔は見れなくて、自分の手を見ていた。


すると、その手が熱に包まれる。


――手だ。


先生の手があたしの両手を包んでる。



「せ、先生?」


とっさに引きぬこうとしたけれど、がっちり掴まれた手は動かない。


「な、なんで?」


顔を上げると、薄く笑った先生の顔があった。


ああ、泣きボクロって本当に泣いてるように見えるんだ。


そんなことがわかってしまう自分が嫌だった。


だって、先生の笑顔が泣きそうに見えることなんて、今までなかった。

< 38 / 50 >

この作品をシェア

pagetop