チョコホリック【短編】

悲しいけど、好きな人が好きでいてくれてるとは限らないんだもん。


「大丈夫です。手を離してください」


そっと温もりが遠ざかる。


(これでいいんだ)


金のヒモを拾うと、手早く封をした。


顔をあげて、笑顔を浮かべる。


引きつった笑みだったかもしれない。


それでも、なんとか笑ってサヨナラしたかった。


かばんとチョコをかかえて、先生に背を向けた。


視線が突き刺さっているように感じるのは、きっと気のせいじゃないんだろう。


調理実習室から一歩出ると、ようやく金縛りが解けたかのように、長い息をついた。


全身がすごく重い。


だけど、何かを振り切るように、廊下を右に駆け出した。


左手にはかばん。


右手にはチョコを握ってる。


本当は行き場をなくしたチョコなんて見たくもない。

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