チョコホリック【短編】

だけど、先生が拾うのを手伝ってくれたし、そして、なによりも、これはあたしの心そのままだから、置き去りにはできなかった。


粉々に壊れた心。


先生がそれをさらに壊すことはないだろうけど、それを先生にさらすのは耐えられない。



なら、このチョコはどうしようか。


答えの出ないまま、廊下の左手奥に渡り廊下が見え、その先にある下駄箱目指して、足を向けた。


その、階段と廊下の境目あたりに人が立っていることに気づく。


学校なんだから人がいたっておかしくない。

調理室からここまでの一本の廊下でも、何人かの生徒とすれ違った。

だけど、進行方向にいたせいか、なんとなしに見ると、それは市橋くんだった。


「市橋くん、教室に戻ったんじゃなかったの?」


足をゆるめ、壁に背をもたれさせている彼の前でとまる。


すると、彼は姿勢を正して、まっすぐにあたしを見た。


笑顔のかけらもない、真剣な眼差しが突き刺さり、ビクッと肩が震えた。


今日の市橋くんはどこか変。

< 41 / 50 >

この作品をシェア

pagetop