チョコホリック【短編】
だけど、先生が拾うのを手伝ってくれたし、そして、なによりも、これはあたしの心そのままだから、置き去りにはできなかった。
粉々に壊れた心。
先生がそれをさらに壊すことはないだろうけど、それを先生にさらすのは耐えられない。
なら、このチョコはどうしようか。
答えの出ないまま、廊下の左手奥に渡り廊下が見え、その先にある下駄箱目指して、足を向けた。
その、階段と廊下の境目あたりに人が立っていることに気づく。
学校なんだから人がいたっておかしくない。
調理室からここまでの一本の廊下でも、何人かの生徒とすれ違った。
だけど、進行方向にいたせいか、なんとなしに見ると、それは市橋くんだった。
「市橋くん、教室に戻ったんじゃなかったの?」
足をゆるめ、壁に背をもたれさせている彼の前でとまる。
すると、彼は姿勢を正して、まっすぐにあたしを見た。
笑顔のかけらもない、真剣な眼差しが突き刺さり、ビクッと肩が震えた。
今日の市橋くんはどこか変。