チョコホリック【短編】
ドキッとした。
調理実習をさぼったり、小倉先生にケンカうったり。
彼のあの態度はひょっとして、あたしが先生を好きって知っていたからじゃないか。
うぬぼれかもしれないけど、そんな気がした。
誰かがあたしを想ってくれてることは嬉しい。
ただ、受け取る、受け取らない以前に……。
「あ、あの、あたし、甘いものが大っ嫌いだから、チョコなんて食べれないの」
振られたとはいえ、あたしは小倉先生が好きなわけで、市橋くんと付き合うことは考えられない。
だけど、市橋くんの気持ちとチョコだけは受け取りたい。
そう思ったからこそ、受け取りたくても受け取れないことで、すごく申し訳なく思った。
すると、不思議なことに、彼の瞳がさらに細くなった。
口の両端が上がっている。
笑顔だ。
見なれた彼の笑顔。
でも、この状況でどうして笑えるのかわからなくて、彼の顔に穴があきそうなほど、その笑顔を見た。