チョコホリック【短編】
その途端に、さみしい気持ちになる。
見捨てられた、そんなふうに思ってしまう。
何、考えてるんだ、あたし。
あたしが好きなのは先生なのに、市橋くんがいないとさみしいなんて、何?
振られてさみしいから、誰かにいてほしいの?
今度はあさましい自分の気持ちに恥ずかしくなっていると、隣からガサッと小さな音が聞こえた。
何の音、と思う間もなく、トリュフが目の前に差し出された。
顔をあげて、市橋くんを見る。
彼はまだ微笑んでいた。
「絶対に大丈夫だと思うから、食べてみて。芹沢がオレを好きじゃないって知ってるけど、これを断られたら、好きでいることさえダメだって言われてるみたいで、嫌なんだ」
「そんなことないよ!」
言われたことが信じられなくて、大きな声が口をついて出た。
だって、あたしだって振られても、好きだもの。
先生以上に好きになれる人に出会うまでは、先生への思いが消えることはない。