チョコホリック【短編】
「そりゃあ、市橋くんのことを好きになれるかなんてわからないし、あたしをずっと好きでいろとは言わないけど、自然と思いが風化するまで、思ってくれていたらうれしいよ」
返せないのに思われ続けることは重いのかもしれないけど、少なくとも、他に好きな人が出来るまでは嬉しく思える。
そう考えたら、単なる食のより好みでこのチョコを受け取らないなんて、市橋くんに失礼だよね。
差し出されたトリュフを受け取り、口に放り込んだ。
思い切って、ひと噛みする。
「んん!?」
広がるのは、想像してた以上に苦い味。
――甘く、ない。
驚きで止まった口が、再び動き出す。
食べ終わると同時に、市橋くんの両腕を掴んだ。
「なんで、おいしの?」
我ながら変な質問。
あまり甘くないお菓子を初めて食べて、びっくりしたんだ。
「やっぱり気づいてなかったんだね」
彼の返事は、苦笑、そんな響きを感じさせる声だった。