チョコホリック【短編】
「あたしは教室に用があるの」
止めようとする市橋の手を振り切って、開けた。
その途端、教室内に立ち込めていた匂いが鼻につく。
「うっ」
「だから言ったのに」
「ふ、ふるさいうぇね」
市橋くんの呆れた物言いにカチンときて、鼻を押さえたまま言ったから、うまく言葉にならなかった。
あたしは耐え切れなくて、開けたドアをもう一度閉めると、後ろにある廊下の窓を開けた。
「ぷはぁ」
ようやく鼻と口を開放して、大きく息をした。
「だから言ったのに」
市橋くんはあたしの体を押すようにして、窓から顔を出すあたしの横に顔を並べた。
「ちょっと、離れてよ」
彼の体を押し返す。
でも、細いくせにしっかりしている体はびくともしなかった。