チョコホリック【短編】
市橋くんがあたしの腕を引いたので、つられて彼の顔を見る。
目は相変わらず糸みたいに細い。
だけど、真剣なオーラのようなものを感じて、思わずのけ反った。
これって、そんなに真剣になるような話題?
まるで、「笑わないから話せ」と要求されているかのようだ。
そして、あたしは話し出すのだった。
「うちの母親がね、甘いものが大好きなの。おかげでうちの家では甘い匂いが充満しているし、毎日のようにケーキを2、3個食べる母を見ていると、じんましんがでそうなほど甘いものが嫌いになっちゃったの」
思い出すだけで、鳥肌が立つ。
あたしがここまで拒否反応を起こすようになってからは、母もあたしの前では甘いものを食べなくなったけど。
「ぷっ、はは」
突然、市橋くんが腰を折って、大笑いを始めた。
「ちょっと、市橋くん!?」
笑わないんじゃなかったの!?
「はは、ごめん。でも、どんなトラウマがあるのかと思っていたら、かわいらしい理由で安心しちゃったんだ」