チョコホリック【短編】

「かわいらしいって、あたしからしたら真剣な問題だったのよ。吐くほどに体が拒絶しちゃって。もういい」


あたしは市橋くんに背を向けると、教室に向かった。


「ごめん、ごめん。で、教室になんの用があるの?」


市橋くんは後ろから、あたしの肩を掴んだ。


「何って、鞄を教室に置いたままだもの」


あたしは何も持っていないことをアピールするように、両手の平を上に向けた。


「じゃあ、ちょっと待ってな」

「え?」



彼はそう言いながら、教室のなかに消えた。


ぽかんとしていると、すぐに出てくる。


「はい」

「あ、ありがとう」


目の前に出された鞄を受け取りながら、お礼を言った。



うれしくて、でも、その気持ちを悟られたくなくて、あたしはうつむいた。


「あれ、もしかして、うれし泣き?」


「泣いてない!」

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