家へ帰ろう
翌朝。
手に持てるだけの荷物と、お年玉を溜め込んだなけなしの五万円を財布に捩込む。
退学手続きは、適当にしといて。と然も、それがかっこいいとばかりに捨て台詞のように言って家を出た。
玄関では母親が何も言わすに、出て行く俺の背中を見送っていた。
川と畑ばかりの中に建つ我が家を振り返ることなく、バス停までの畦道を足早に歩いた。
東京までたかだか二時間半じゃねぇか。
たった二時間半の先には、絶対俺が探す何かがあるはずだ。
その何かは、まだわからないけど……。
時間は、山ほどあるんだし。
そんなことは、向こうに行ってからゆっくり考えればいい。