家へ帰ろう
バスはいつもと何も変わらず、ひたすらトロトロと走っていた。
意味もなく、苛立ち、焦る俺の気持ちを逆なでするほどののんびり具合だ。
数人の老人をいくつかの停留所で拾い、やっと駅に辿り着いた。
待合室は、人も少なくさびれている。
何を勘違いしているのか、近所のおばちゃんたちが四人。
化粧っけのない顔を突き合わせて話し込んでいる。
並ぶ椅子は、来る列車を待つためのものじゃなく。
近くの住人が寄り集まる憩いの席。
置かれた自販機は、喫茶店の珈琲代わり。
寂れた小さなキオスクのせんべいやお菓子は、茶菓子の代わり。
そんな中にいることが、嫌で嫌でしょうがない。
こんな場所、嫌いだ。
こんな町、嫌いだ。
こんな田舎、大嫌いだっ。
手に持つ鞄の取っ手をギュッと握り締め、胸の中のモヤモヤとムカムカにひたすら耐える。
うまく言葉にできない感情に支配されて、それを吐き出すように俺は大きく一度深呼吸した。